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2016年06月04日

やんばる通信

 爬虫類両生類の専門誌「クリーパー」に連載中の”やんばる通信"もすでに43回に達しており、私の拙い文章ではあるが、おかげさまでそれなりに好評を得ているようである。しかし、専門誌ということもあり、一般書店や普通のペットショップには置いておらず、爬虫類両生類の専門店でしか扱っていないのが現状です。そこで、クリーパー社の社長にお願いしたところ、快くこのホームページ上に掲載することを承諾して頂いた。

 {クリーパー(爬虫・両生類情報誌 隔月刊)  爬虫類・両生類の分類・飼育法。繁殖・特集・イベント紹介など国内で最新の情報がぎっしりと詰まった情報誌。多少でもこの分野に興味のある方なら必見の情報誌でしょう。}

 このやんばる通信の内容は、私が沖縄に赴任しやんばる通いをしはじめて45年、やんばるを自分の足で歩いて経験したことを紹介するコーナーで、内容のすべては私に任され自由に書かせてもらっています。今後は最新のやんばる情報や過去に起こった出来事について、ここに紹介していくつもりで、記事の新旧が分かるようにクリーパーに掲載された年月や号数も記していきます。

 やんばる通信 (1)
 {新しいフィールドを求めて}
 これまで私の使用するフィールドの中の一部で、台風や豪雨による地形の変化や乱獲により、出現動物が少なくなり、やんばるツアーのコースとしては厳しくなってきている地域が出始めている。そこで、最近は一人の行動の時に新しいコースを探索することにしている。
 記憶を頼りに、昔歩いた場所やこれまで入り込まなかった場所を中心に探すことにし、あちこち原付を乗り回し、めぼしい場所を歩き回るわけだが、早々良い場所があるわけではない。その多くは開発されてしまったか、環境がより悪化したせいで、そこに生息する動物が限られ、今ひとつおもしろくないことが多い。また、さまざまな条件を考慮しながら、日中にこれはと思われる場所を見つけたら晩に再度行き、夜の状態を確認するだけでなく、一年を通しその変化も調べなくてはいけない。ツアー料金を支払って来てくださるお客さんなど多くの人に、この素晴らしいやんばるの魅力を知ってほしいという一念で、頑張らなくてはと思いつつもこの苦労に要する時間と経費はかなりのものである。
 その甲斐あって、今3か所について確認中である。うち一つは、以前は地道で常に薄暗い、住民の生活道路でもある。現在は新しい道路に変わり、道路幅も広い2車線の舗装道路に変わっているが、すぐ近くにハブが多く生息する{ハブどころ}といわれる場所があり、道路脇の側溝内やその周辺の環境も悪くない。そこで夕方ではあるが昨年よりなかなか出会いがなかったハブに遭遇した。道路脇の小さな木から垂れ下がり、通り過ぎてから違和感を感じ、原付を止め振り返ると枯れ木にしてはやはりおかしいのである。原付を降り近づくとハブではないか。全長は1.5mほど。それもヒヨドリサイズをのみ込んでいるのか、胴の中央がぷっくりと膨れている。ゆっくり動いているが、残念ながらカメラの準備が間に合わず、膨れた胴の一部と頭部のみしか撮影されなかった。その場所から20mほど離れた場所では1.8mほどのアカマタも道路脇に出没。道路脇の側溝内も落ち葉のたまり具合によってはイモリ類やトカゲ類も出没するだろうし、リュウキュウヤマガメも餌を求めて側溝内に入ってくる可能性も高い。今後、夜間や一年を通して観察することで希望ももてる。
 2つ目は、部落奥のミカン畑に通ずる地道、両脇は琉球石灰岩がところどころに露出し、その先のミカン畑は以前より広げられてはいる。昔、専門学校の生徒を何組か案内したが、日中のみでトカゲ類やリュウキュウヤマガメ、ノグチゲラ、アカヒゲなどの天然記念物などの他に種々の昆虫類も数多く確認できた場所で、比較的昔の状態のまま良い状態で残っている。今年12月の暮れに再度昼夜を通し確認したが、日中にはシリケンイモリが数多く確認され、夜間ではサワガニ3種が見られ、オオサワガニなどは道路上での採食行動が見られたほか、イボイモリがやはり道路上で8個体ほど出没しており、その中の1個体は森林性の大きなミミズ(約18㎝)を口いっぱいにくわえて呑み込もうといている最中。
 3つ目は、林道の広い道路脇で入口はススキや雑草でブッシュ化し、当初ミカン畑につながる農道と思われたが、踏み込んでみると古い林道で、道は谷底まで続いている。道は下り坂の地道で、途中までは木々の間に琉球石灰岩が露出している地形だが、その先は木々が茂る中を下る感じで谷底まで続き、雨天時には林道上を水が流れる痕跡が数か所ある。谷底は比較的広いがその周囲は山で囲まれ、沢は確認できないものの植物相から湿度は高く、雨天時は湿地化するかもしれない。この谷底は日中であっても直射日光は入りにくく薄暗い。ツアーコース中の他の場所では味わえない感覚を体験できる、今後のツアーの観察地に利用でくる可能性はを秘める。今回は時間の都合上、谷底までの確認で終わったが、道は谷底を横断するように続いており、他の林道もしくは農道に続いている用の思われる。このコースは今後使用できるかは不確定だが、入り口付近ではマイマイ類やタニシ類、サワガニ類が数多く確認されており、一年を通しコースの安全性や動物相の調査する必要がある。
                                            (クリーパー75号掲載)

投稿者 takada-okinawa : 2016年06月04日 14:44

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